概要 印刷通販市場の伸び率は弱まるでしょうが、ネット発注窓口として印刷会社は当たり前に必要とされるようになります。

ネットで印刷の注文をする「印刷通販」市場について、少し思う所があるのでまとめておきます。

なお、所属する会社・団体の意見と必ずしも一致するものではありません。



●印刷業界全体は20年で30%売上高が減少

まず、印刷業界全体としては、そんなに盛り上がっていないことは多くの方は感じているところではないでしょうか。

ウェブを始めとするデジタル媒体の方に予算を取られて、印刷媒体はどんどん減っている印象です。

実際の統計を見てみると、約20年前のピーク時の8.9兆円から現在は5.4〜5.9兆円に縮小していることになります。30%程度の減少です。大きく減少していますね。

まず最初に、印刷業界の現状と印刷通販マーケットの流れを押さえておきたいと思います。印刷業界のピークは、1997年時であり、その時の市場規模は8.9兆円でした。そして様々なレポートなどを拝見すると、現在の市場規模は5.9兆円と言われ、ピーク時より30%市場が減少していることになります。
特集|印刷通販特集 2015 : 成功の鍵はオムニチャネルによるブランディング 〜 寄稿・船井総研 岩邊久幸氏(印刷ジャーナル)
「工業統計」は2013年について4人以上の事業所に限定した速報を公表した。2013年の出荷額は2.4%減の5.4兆円と、大震災後、印刷出荷額の下げ幅は2年続けて3%台を下回る小ささで安定した。
2014年の印刷市場を振り返る(JAGAT)



●現在の印刷通販市場は1000億(船井総研)

その中でも元気だといわれるのが印刷通販の市場。

船井総研の寄稿によれば、現在の印刷通販の市場は1000億円から1200億円とのこと。

現在印刷通販市場は、1,000億〜1,200億円と予想しております。
特集|印刷通販特集 2015 : 成功の鍵はオムニチャネルによるブランディング 〜 寄稿・船井総研 岩邊久幸氏(印刷ジャーナル)

なお、マイナビ2016の情報によれば、プリントパックは売上高206億円(2015年4月実績)・グラフィックが160億円(2014年6月)・プリントネットが46億円(2014年10月実績)で、この3社だけで400億円近くになります。

また、バンフーは事業内容全てが印刷通販ではありませんが、マイナビ2016によれば101億円(2015年1月期)の売上高があります。バンフーは印刷ジャーナルの印刷通販特集に含まれているので、これも全て加算すると、500億円近くなり、4社で船井総研が予測する印刷通販市場の約5割を占めていることになります。


船井総研によれば、この印刷通販市場は2000億円か2500億円まで伸びると予想しています。

このような流れから、商業印刷における印刷通販市場は、2,000億円〜3,000億円までは成長するだろうと予測しております。もう少し正確に申せば、2,000億〜2,500億円というのが、現実的なところではないでしょうか。
特集|印刷通販特集 2015 : 成功の鍵はオムニチャネルによるブランディング 〜 寄稿・船井総研 岩邊久幸氏(印刷ジャーナル)



●現在の印刷通販市場は600億円くらいでは?(矢野経済研究所)

ところが、矢野経済研究所が2013年11月に出したレポートでは、調査対象は違うにしても、2012年度の印刷通販市場の約490億円、2013年度予想は544億円、2014年度予想は645億円となっています。

成長市場であるとしつつも、船井総研の寄稿にある「現在の印刷通販の市場は1000億」「将来は2000億」という数字からは大きく乖離した数字になっています。

矢野経済研究所では年11%程度の伸びを予想しているので、2020年頃には1000億円はあるかもしれませんが、そのままの伸びだと(船井総研の寄稿にある)2000億円になるには2026年になってしまいます。

20150815-印刷通販市場の規模-01

【画像出典】『印刷通販市場に関する調査結果 2013」(矢野経済研究所)


確かに船井総研の寄稿では何年までにといった文言は掲載されていないので、別に2000億や2500億円に市場が育つのは10年後でも20年後でも構わないとも言えますが、ここまで大きな違いが出てしまう点は不思議なところです。



●無制限に売上高が伸びていく市場ではない

どちらが正しいかはさておき、売上高は「客数×単価」が基本です。

印刷物は基本は販促物として使われることが多いでしょう。

印刷物のほとんどは閲覧して(何かの行動を起こしてもらい)役割を終える消耗品のようなものなので、印刷の単価を無制限に上げていくことはできません。その点で、単価を上げづらい商品であるといえます。

単価を低価格にすることで客数の増加する方法は、かけ算の片方が下がっているので、よほどバランスをうまく取らないと売上高の伸びは見込めません。

またテレビCMなどのマスへの広告で新規の客数を増やす方法は、効果はあると思いますが、提供するサービスが印刷物という特性上、増加ユーザー数には限界があるように感じます。

特に2009 年度以降、市場では価格競争が激化しており、販売価格は下がり続けることとなった。そのためここ数年は、市場規模は拡大し続けているものの、その成長率は鈍化している。
『印刷通販市場に関する調査結果 2013』(矢野経済研究所)


よって、船井総研や矢野経済研究所が考えている、印刷通販市場の伸びというものは、印刷通販に新規の大きな市場があるというより、印刷通販を導入していない印刷会社で、今まで営業対応だった案件に対して、システムを導入し印刷通販での対応することで「結果として」印刷通販の市場が大きくなるということなのではないでしょうか。



●資源の割り当てを再構築し、集中と選択をせよ

船井総研の寄稿にもあるように、印刷通販の仕組みは印刷会社に当たり前のように存在し、窓口のひとつとして機能することが求められています。営業窓口の形態はニーズに合わせたものを提供すべきでしょう。

そのように考えると私は、印刷通販というビジネスモデルは、印刷通販事業単体で儲ける・儲けないという話ではなく、「機能」として持たないといけない時代に突入したのだと認識しております。

特集|印刷通販特集 2015 : 成功の鍵はオムニチャネルによるブランディング 〜 寄稿・船井総研 岩邊久幸氏(印刷ジャーナル)

 印刷会社が存続するためには、今までお付き合いしてきた多くのお客様と今までのやり方で数多くお付き合いするのがベストではありません。それでは収益性が下がる一方です。

 つまり「お客様のニーズと販売方法を合わせること」「販売方法(収益モデル)に合わないお客様とはお付き合いしないと決めること」の2点が必要なのです。

特集|印刷通販特集 2015 : 成功の鍵はオムニチャネルによるブランディング 〜 寄稿・船井総研 岩邊久幸氏(印刷ジャーナル)


最終的には、人が介在しなくても対応できる部分は印刷通販のシステムで対応し、人が対応しなければならない部分ではキチンとリソース(資源)を割り当て対応する。

そのリソースの割り振りを考え、お客様に事業に貢献できる的確な提案・対応ができるかどうかが、今後印刷会社が伸びていくために必要です。

そのためには、まず、お客様のニーズを傾聴し、理解する力が必要です。

さらに、そのニーズを実現できるシステム開発ができる会社との連携、そして印刷営業の提案力強化が重要になってくることでしょう。


印刷会社には、まだやれることがたくさんあるはずです。

がんばっていきましょう。それでは。


●参考



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ブログ著者

笹川純一・jdash2000

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ケータイ好き。ガジェットが好きでiPhoneやらAndroidなどを所有。Surface Pro 2も持っている。

お仕事は印刷会社で営業・広報活動・DTPオペなどをしています。要は何でも屋さんです。最近は印刷関連より、自社のウェブサイトを制作するお仕事がほとんど。使用しているCMSはMovable Type。

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