電通「鬼十則」から「サラリーマンではなくビジネスマンになれ」「作業はするな」「でかい仕事をしろ」


  • 公開:
  • 更新:
  • 編集:
概要 ▶ 電通鬼十則から『一、仕事は自ら「創る」可きで与えられる可きではない』『二、仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで受け身でやるものではない』『三、「大きな仕事」と取り組め 小さな仕事は己れを小さくする』について。

電通には「鬼十則」と呼ばれる電通スタッフのためのビジネスの鉄則集がある。

これは電通の四代目社長吉田秀雄さんが昭和26年(1951年)に書いたもの。書かれてから既に60年が経過している。しかしビジネスの金言といわれるものとしてたびたびこの電通「鬼十則」が出てくる。

それはどんなものなのか、


『電通「鬼十則」』(上田正也著・PHP文庫)を読むのは3回目。

奥付を見てみると2006年の初版第一刷となっているので購入と1回目の読了はその頃だろうと思う。何年後かに、また鬼十則が気になって読んだ記憶がある。今回は身近なところで十則という言葉が出てきたので、鬼十則という十則もあったなという思いで読み始めた。


まず鬼十則の十則を書き写しておく。

一、仕事は自ら「創る」可きで与えられる可きではない

二、仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで受け身でやるものではない

三、「大きな仕事」と取り組め 小さな仕事は己れを小さくする

四、「難しい仕事」を狙え そして之を成し遂げる所に進歩がある

五、取り組んだら「放すな」殺されても放すな 目的完遂までは

六、周囲を「引き摺り廻せ」 引き摺るのと引き摺られるのとでは永い間に天地のひらきが出来る

七、「計画」を持て 長期の計画を持って居れば忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生れる

八、「自信」を持て 自信がないから君の仕事には迫力も粘りもそして厚味すらがない

九、頭は常に「全廻転」 八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ サービスとはそのようなものだ

十、「摩擦を怖れるな」 摩擦は進歩の母 積極の肥料だ でないと君は卑屈未練になる

『電通「鬼十則」』(上田正也著・PHP文庫)


●仕事はビジネスマンとして自ら「創る」こと

書籍『電通「鬼十則」』の中から、気になった部分を紹介する。

44ページでサラリーマンとビジネスマンの違いを表し、ビジネスマンでなければこれからは生きていけないとのことが書かれている。では、サラリーマンとビジネスマンの違いは何か。ビジネスマンは専門分野を持っており、サラリーマンにはないとしている。ビジネスマンは自分の専門分野を持っているので会社依存にはならず、専門分野のの強みを仕事に変えられる。サラリーマンは専門分野がないので、そうしたことが無理だとしている。

確かに与えられる仕事というのは他者依存であって、他者の都合で良くも悪くもなってしまう。他者は自分ではコントロールができないので、受け身の仕事では精神的にも疲弊してしまうことも多いだろう。仕事が来るのか来ないのかわからない状態では不安な気持ちになっても仕方が無い。

しかし、自分の専門分野を仕事としてこちらから「提供」するのであれば、他者の協力は必要になるが、こちらから仕事を提示しているので、自分である程度コントロールできる。そうなれば精神的に疲弊しづらいし、仕事を提供する先も自分でコントロールできる(見つける能力は別だが)ので、次の仕事を得る過程も自分の仕事となり、「仕事がない(来ない)」と不安にならない。

また『一、仕事は自ら「創る」可きで与えられる可きではない』『二、仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで受け身でやるものではない』は仕事に向かって自ら行動せよ、ということを表している。果報は寝て待てというスタンスでは、自分を運に任せることになってしまう。そうならないために、ビジネスの相手をよく観察し、どのようなサービス・ソリューションを提供すれば良いかを考え、仕事を「創る」ことを求められているのではないか。


●作業と仕事

57ページでアルビン・トフラーさんの著書『第三の波』(日本放送協会)の話がの紹介され「情報化社会の次には創造社会、知恵社会がやって来る」と書かれているそうだ。

創造社会・知恵社会は、創造力と想像力によって知識を組み合わせて新しい仕組みや物を創り出すイノベーションが起きる社会ということだろう。

イノベーションを起こすためには先を見る力が必要だ。『二、仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで受け身でやるものではない』の「先手先手と「働き掛け」て行く」ためには、今あることを繰り返す「作業」(オペレーション)であってはいけない。作業を作業として繰り返していても新しいことは生まれない。次のステージを見越した「仕事」として計画的におこなわなければならない。

ここで言う「仕事」は未知への挑戦である。答えがひとつではなく、様々な答えがあるだろう。仕事として未知に対して「働き掛けて」そのフィードバックを得て進めていくことが重要だ。


●仕事のとらえ方

「三、「大きな仕事」と取り組め 小さな仕事は己れを小さくする」では、小さな仕事しかしたことがない人には大きな仕事をイメージすることが難しく、大きな仕事をすることが不可能だということを表している。

仕事とは社会にある問題・課題を解決していくことだ。

79ページでは日本人の持つ「マイナス発想」として『過去の事例に照らしてそれは前例がない。かつて試みたがうまくいかなかったから今もおそらくできないだろう、と言って譲らない。』と書かれている。これでは仕事の幅が大きくなって成長をするどころか、小さく縮こまっていく不活性なことになってしまう。

「大きな仕事」とは金額の規模が大きいということを単に表すのではなく、視野を含めたスケールの大きさを持たなくてはいけない。

79ページではそのために日本人は以下のことをすべきだとしている。

  • 前例主義の排除
  • グローバルなスケールでの視野・発想を持つ
  • 異質なものを自由に取り入れる精神を持つ
  • 縄張り意識の排除
  • リーダーシップを持つ

この中でも「異質なものを自由に取り入れる精神を持つ」は日本ではなかなか難しいことなのかもしれない。84ページで『人間は、平等なんかじゃないのだ。不平等にできているのだ。それが自然の原理原則なのだ。自然をよく見るといい、全てが平等ではない。全部が、それぞれ個性的なのだ。』としている。

個性を見ていくというのは、自分とは異質なものも認めていくということだ。異質なものも自分に取り入れ、成長の糧にできるかどうかが大きな仕事を為すために必要だということだろう。


今回はここまで。それでは。

カテゴリー:

このページをぜひシェアしてください